gt0025 「幻のギタリスト」鈴木康允さん(May 30, 2005)
「人間国宝級」「幻のギタリスト」と呼ばれているジャズギタリストがひたちなか市に在住しています。鈴木康允さんという方で、通称「鈴木ぽんちゃん」と呼ばれています。ギタリストの端くれとして非常に尊敬する存在であり、取上げてみました。
現在75才くらいなのですが、東京生まれで若い頃は東京で活動していました。あの世界的なジャズギタリスト、ジムホールが来日したときに鈴木ぽんちゃんの演奏を聞き、非常に感銘をうけたということで、ずっと親交が続いているようです。演奏スタイルはジムホールそっくりで、お互いに共通するところを感じたのだと思います。
若い日本のギタリストがアメリカに勉強に行ってジムホールに会ったとき、日本には鈴木というギタリストが居るだろうと言われたというようなことも聞いたことがあります。
基本的にはギター、ベース、ドラムスのトリオです。演奏場所には通常ピアノが置いてあり、遊びに来たプロのピアニストと即興で共演することも良くあったそうです。ピアニストとの共演を続けるうちに、自分の演奏スタイルがマンネリ化していることに気づいたということです。
結局は華やかな東京を捨てて茨城の田舎に引っ越してきたのですが、それでも東京からは出演依頼があったようです。ピアノが置いてあるところには決して出演せず、それでも何とかと依頼してくるところには、入り口ドアを壊してでもピアノを外に運び出すなら出演しても良いということまで言ったそうです。
華やかな世界よりも、自分の好きな音楽ができる田舎を選んだということなのでしょうか。
去年、初のリーダアルバムを発売したということを聞き、インターネットで探してやっと手にいれました。ギタートリオで、素晴らしいの一言につきます。
ジャズはアドリブが生命なのですが、最初のテーマの部分から何ともぞくぞくするリズム感で、とても真似できないと感じました。
昔ときどき一緒に演奏していたアマチュアベーシストが、鈴木ぽんちゃんにベースを習いに行っていました。クラシックギターで練習するそうです。音の流れを勉強するのだから別にベースでなくても良いということなのでしょう。そのときに鈴木ぽんちゃんから「最初のテーマを聞けば、その人がアドリブがうまいかどうかが分る。」と言っていたそうです。
確かにそのCDを聞くと、テーマをやっているのですが、譜面通りではなくリズムが前に後に微妙にずれているのです。なんというリズム感・・・・!!。
日立の海岸通りにあった喫茶店に、鈴木ぽんちゃんが良くデュオで出演していました。もう一人は、多分鈴木ぽんちゃんの弟子で京都在住の小嶋利勝さんというギタリストです。
ボリュームは最小限に絞っています。ギター二人ですから、生でも聞こえそうな感じです。「ジャズはボリュームではないねぇ」とそこの店長は唸っています。いつもカウンターに座ってだまって聞いている若い人が居ました。東京のギタリストだということでした。
このようなジャズギターの本質が聞ける場は多分東京では数少ないということと、それにも増して鈴木ぽんちゃんを聞けるということの意義をそのギタリストは知っていたのでしょう。
私も何度か聞きましたが、生で鈴木ぽんちゃんを聞けるということは幸せだったのですね。
勝田駅の近くのサムシングに時々出ていると聞きました。今でもやっていると思います。
ところで・・・・、一緒にやっているピアノのT.N.さんが以前くまさんとコンボをやっていたとき、くまさんのアルトサックスソロのときにピアノがうるさいと良く言われたそうです。自分では良いと思っているバッキングがソロの邪魔をしているということのようなのです。
これはアマチュアではなかなか気がつかないところです。音を出さないということがいかに難しいか、最小限の音で素晴らしい感じを出しているアドリブソロを聞くと良く分かります。最近のT.N.さんのピアノはバックのときはすごく控えめだと感じます。
最近は電子楽器が増えてピアノも大きな音が出せるようになりました。コンボのような小編成のバンドであってもマイク等の使い方によっては悲劇的なことになります。
スピーカは通常客席の方を向いていますから、演奏している本人には良く聞こえません。そこでボリュームを少し上げると、他の人は自分の音が聞こえなくなるのでボリュームを上げます。気がつくと、ギターのボリュームを一杯に上げてもピアノの音にかき消されて、自分の音が聞こえなくなるということになってしまっています。
こうなるとそのステージはもう回復不可能です。他人の音は分っても、自分の音が分らないというのがごく普通のパターンです。
おじんハワイアンバンドでも最近そういう傾向になってきました。小さい店なのに、ウクレレ用にマイクスタンドを立てています。キーボードはバックなのにばんばんバッキングしており、生でも大きい音がでるクラリネットはマイクを通してますます大きな音にしています。
5月21日(土)の東海村の「しんちゃん」でのライブのとき、ギターソロが回ってきたときに「ピアノ、音を小さく!!」と思わずどなってしまいました。
「しんちゃん」のライブが終わった後、基本的にマイクは使わない方が良いのでは、マイクを使わないのが一番良い音が出るはずと提案しました。
5月28日(土)は水戸の「梅良里」でのライブでしたが、ウクレレもクラリネットもマイクを使っておらず、キーボードの音も控えめで良い感じでした。
他の人の音が気になり始めると、バンドで音楽を作るというのは想像以上に難しいと感じます。
この年になってやっと鈴木ぽんちゃんのジレンマが少し分ってきたのかなぁ。
究極はやっぱりギターソロだと思うこの頃です。
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