gt0042 ギター演奏における脱力運動について(September 28, 2005) (February 10, 2009 追記)
先日の「ホリゾンかみね」でのソロギターライブのとき、第二ステージの後半で左手の小指が、次に人差し指がつってしまいました。即座に演奏を中止してもおかしくない状況でしたが、手の力を抜いて他の指の応援も借りて、何とか演奏不能だけは免れることができました。
人前での演奏時には相当な力が入っているのですね。しかし2時間足らずの演奏で、演奏不能になっては困ります。何とか、力を入れなくても良い演奏法を身につける必要があります。
ところで、私の左手の指先はタコで硬くなっています。以前インターネットで、ギターを弾いてて指先にタコができる訳はないという記事がありました。ところが現実にできています。テレビで見たプロの演奏家の指先には弦を押さえたために凹んだ痕があり、明らかにタコができています。
指先にたこができない演奏法というのはどうも眉唾と思っていました。
1930年代、ジャズ黄金期のアメリカで一瞬だけ活躍した天才ジプシー・ジャズ・ギタリスト「エメット・レイ」という人を主人公にした「ギター弾きの恋」という映画が、以前テレビで放映されました。ビデオにとってあります。その映画に出ているのは「ショーン・ベイ」という俳優なのですが、素晴らしい演奏で、どう見ても手に持っているアコースティックギターを実際に弾いています。
その弾き方がすごく軽やかなのです。ギターの弦を指先で押さえるというのではなく、ただ指の腹を弦の上に次々と乗せていくという感じなのです。指の動きは出てくる音とピタリ一致していますから、実際に弾いているとしか考えられません。
ライブ中に指がつったのをきっかけに、インターネットを色々と調べてみました。
ついに見つけました!「************」 アマチュアのクラシックギタリストのホームページなのですが、沢山の独自の理論が展開されています。今までのギターの教え方は間違いだらけだということです。じっくりと読んだところ、どうも本物らしいので、印象に残ったものを幾つか紹介することにします。
ギターの教則本では、左手の指を指板に垂直にして弦を押さえるのが基本と教えていますが、これは間違っているというのです。コップを持つとき、指先を立ててコップ表面に当てたり、親指でギュット押さえたりはしません。左手でのギターのネックの持ち方は、コップを持つような自然な形であるべきで、そうすると余分な力は入らないということです。
必然的に左手の指は軽くアーチを描き、指の腹で弦をそっと押さえる形になります。親指でネックの裏をガシッと押さえるようなことにはなりません。この形は正に「ギター弾きの恋」で見た弦の押さえ方です。
左手の脱力の練習法としては、親指をネックから離して弾いてみるのが良いそうです。あるところにこういう記事を書いたところ、そんなことできる訳がない、間違っていると反論があったそうです。間違った弾き方・・・指の先を立てて弦を押さえること・・・をしているとその通りで、指の腹で弦を押さえるようにしない限り、親指をネックから離して弾くことはできないそうです。
「指の重さで弦を押さえる・・・」と表現している人も居るようです。確かにそのような押さえ方ができれば、左手の指先にタコができることもないでしょう。
脱力運動とは、3つの必要最小限で行う運動で、「必要最小限の力」「必要最小限の時間」「必要最小限の距離」の運動です。必要最小限の力(最小限の筋肉の緊張)だけ使い、しかもそれを必要最小限の時間だけ筋肉を収縮させ、指を必要最小限の距離だけ移動させるのです。
エネルギー消費を最小限にする運動ということもできます。我々の日常生活は、無意識のうちにエネルギー効率の最も良い行動をとっており、「脱力運動」は全く自然なことです。
コップを持つように「必要最小限の力」で弦を押さえ、音を出す「必要最小限の時間」の後は指の力を緩めて弦を離す、ということを基本動作だとすると、今までの常識的なギターの弾き方にはかなりあやしいものがあります。
もう一つ、目から鱗的なことは、基礎的な準備運動は不要ということです。普通は本格的な練習に入る前に、スケールを弾いたりして指慣らしをします。
この方は練習の最初に「アルハンブラの想い出」を弾いて、爪の状態などをチェックするそうです。コンディションに問題なければウォーミングアップなしでも、きちんと弾けるということです。
朝起きたばかりでも、両手の指は十分に早く動かせることができ、ギターを弾くのにそんなに早く指を動かせる必要はないので、ウォーミングアップの必要はないというのです。
確かに上記の3つの必要最小限で行う「脱力運動」ができれば、その通りかも知れません。
私の左手の指先からタコが消えたとき、また一段の進化ですね。まぁ、練習をさぼってタコがなくなるという場合もありますが・・・。
後日談(February 10, 2009)
かなり前の記事なのですが、もしや見る方が居て誤解されるといけないので、遅ればせながら追記します。
ギター演奏に限らず「脱力する」ことは当たり前のことで、ことさら「脱力運動」として取り上げることもないようです。その後の感じでは、「コップを持つように」「基礎的な準備は不要」などはかなり眉唾のようです。これを提唱している方のホームページを見たのですが、多くの投稿者の意見と同じように、言っていることとやっていることがかなりアンバランスだと私も感じました。この方程度のトレモロのアルハンブラなら、練習なしの一発でも弾けるでしょう。しかも誤った脱力のせいか、押さえ方が悪いのか、ときどき弦がびりついているし。
他人のことを悪く言うのは本位ではないのですが、一時にしろ単純に信じた自分への戒めを込めて、あえて追記いたしました。
指先にタコができないようでは、一人前のギター弾きとは言えません。
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