bg0018 変人(March 2, 2006)
H製作所では博士号取得者の返仁会という会があります。私も遅ればせながら定年の3年前に、ライフワークとして続けてきた仕事の成果をまとめて工学博士を取得し、会員の端くれになっています。
会の設立当初は「変人会」と称していましたが、会合を持つときにどうも按配悪いということで、「返仁会」に改称されたそうです。ただし、個々の会員は今でも「変人」と称されています。実際に変人の割合はかなり高いと思います。
「博士が1000人も居て・・・・」とは、H製作所のダメさを形容するときに良く引き合いに出される言葉です。それはさておいて、3月1日(水)に返仁会の茨城地区総会がH研究所で開催され、参加しました。お目当ては筑波大名誉教授の村上和雄博士の講演です。
「生命の尊厳」と題した講演でしたが、素晴らしい内容で、極めて有意義な1時間30分でした。その内容を表現するのはとても難しいのですが、忘れないうちに少しでもと思い、この文章を書いています。
村上博士は世界に先駆けて高血圧の黒幕である酵素「レニン」の遺伝子解読に成功するなど、現在ノーベル賞の有力候補と注目されています。
ヒトのゲノム(全遺伝子情報)は、わずか4つの塩基で構成され、この塩基のペアが約30億個連なっています。塩基の配列が偶然のものとするなら、我々一人一人は4の30億乗分の1という奇跡的な確率で生まれてきたことになります。そのような偶然は今の科学の常識では有り得ず、塩基の配列の設計書がどこかにあり、それを書いた何者かが居るということになります。
ここで天地創造の神を持ち出せば聖書の物語になってしまいます。宗教上の神の話はさておいて、人間の目には見えない自然の力(something great)があるはずだというのです。40億年前に生命が誕生してから現在までの進化の過程をたどりながら、母親の胎内で受精した受精卵は変化して赤ちゃんとなって生まれるそうです。母親の胎内に40億年の時が詰まっているのです。
こんなことが偶然で起こるはずはありません。生物を作ろうとする大自然の意志のようなもの、something great、があり、それに沿って遺伝子が設計され、一刻の休みもなく働き続けています。命を粗末にすることなど、できないのですね。
遺伝子は環境によってスイッチがオン、オフされるそうです。ストレスが与えられると悪い遺伝子を目覚めさせ、良いストレス(笑い、感動)によって良い遺伝子のスイッチがオンされるとのことです。吉本興業と協同で作成したお笑いのテープが、高血圧に良い効果をもたらせることが実験で確認されているそうです。
「あなたの想いで遺伝子が変わる!」病は気からは本当のようです。
「40年の研究をたった1時間30分でしゃべれる訳はない」という村上博士の言葉を借りると、「1時間30分の感動をこんな文章一つで表せる訳がない」です。
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